「弓月様! お気をつけ下さい!」


新蔵も弓月を守りに行こうとするが、声を掛けることしかできない。自分たちに活路があるのかどうか、先が全く見えなかった。


「貴様、止まれ! 言うことを聞かぬなら」


男は、弓月の手前で馬から飛び降りる。

数人の蚩尤軍兵士が近づき、男を制止するが……。なんと男は問答無用で蚩尤軍を斬り捨てた。

弓月は、その見覚えのある剣捌きに、動悸が静まらない。


(まさか! でも……そんなことが)


「待たぬかっ! 拙者、蚩尤軍、西国の将を務める、武藤小五郎である。貴様は何者だ!」


最前列に姿を現した武藤は、厳しい口調で男を誰何した。男のほうは、左手で笠の紐を解くとゆっくり面を見せる。


「なっ!?」


武藤のみならず、その場にいた弓月以外の人間は驚愕の声を上げた。