弓月の耳に馬の蹄の音が聞こえた。
(まさか! 敵の援軍)
もし、そうであれば、弓月らに取る手立てはない。『青龍二の剣』を手に乙矢は倒れ、正三も意識不明だ。長瀬も重傷を負い、新蔵は、弓月の周囲の敵を蹴散らすのに精一杯。
凪と弥太吉の身も案じられたが、今の弓月には知る術はなかった。
正三に斬りかかられた動揺をどうにか抑え、彼を止めるべく再び立ちはだかった。しかし、一旦萎えた心は、すぐには奮い立たず、この期に及んでは、刀を手にする気力すら潰えてしまった。
この時、弓月はただの少女に戻っていた。
乙矢は、彼女を守るために正三の剣を受けた。そして、約束通り、神剣を抜いたのだ。自分は一門の正三を止めることすらできなかったのに。
「乙矢殿……乙矢殿……お願いです。目を覚まして……お願い」
弓月は乙矢に縋りつき、泣き震えていた。
馬のいななきは徐々に近づいてくる。それは一騎だけのようだ。馬上の主は、笠を被った若武者風のいでたちである。
蚩尤軍も、敵か味方か判断がつきかねるようだ。
そんな彼らの頭上を見事に馬で飛び越え、一直線に弓月の元に駆け寄った。
(まさか! 敵の援軍)
もし、そうであれば、弓月らに取る手立てはない。『青龍二の剣』を手に乙矢は倒れ、正三も意識不明だ。長瀬も重傷を負い、新蔵は、弓月の周囲の敵を蹴散らすのに精一杯。
凪と弥太吉の身も案じられたが、今の弓月には知る術はなかった。
正三に斬りかかられた動揺をどうにか抑え、彼を止めるべく再び立ちはだかった。しかし、一旦萎えた心は、すぐには奮い立たず、この期に及んでは、刀を手にする気力すら潰えてしまった。
この時、弓月はただの少女に戻っていた。
乙矢は、彼女を守るために正三の剣を受けた。そして、約束通り、神剣を抜いたのだ。自分は一門の正三を止めることすらできなかったのに。
「乙矢殿……乙矢殿……お願いです。目を覚まして……お願い」
弓月は乙矢に縋りつき、泣き震えていた。
馬のいななきは徐々に近づいてくる。それは一騎だけのようだ。馬上の主は、笠を被った若武者風のいでたちである。
蚩尤軍も、敵か味方か判断がつきかねるようだ。
そんな彼らの頭上を見事に馬で飛び越え、一直線に弓月の元に駆け寄った。

