「『鬼』が味方に向かった時は、即座に射殺せ」

「はっ!」


彼らは、武器庫の茅葺屋根の上に、弓矢を構え待機していた。誰が『鬼』となっても、即座に暴走を止めるための人員だ。

里人が逃げ惑い、舞い上がった土煙に『鬼』の行方を見失う。

再び見つけ、いつでも放てるように、矢を番えた瞬間、足場に暖かい風が吹き抜けた。



弥太吉は迷っていた。火を点けたら、五も数えぬうちに扉から飛び出さねば助からない。外から仕掛けられるような、導火線など持ち合わせてはいない。いよいよ、武器庫を探せば見つかるかも知れないが……そんな時間もなかった。

弥太吉は火を放つと同時に体を反転させ、戸口に向かって走る。


――直後、赤い火柱が入母屋造りの屋根を吹き飛ばした。



「よしっ! 参るぞ、新蔵!」

「はいっ」


凪はその直前、突撃を長瀬に頼み、武器庫へと急いだ。爆風が上がったのはそのすぐ後のこと。