長瀬は武器庫の陰から飛び出し、囲いに向かって突進する正三を目の端に捉えた。


「凪先生! 正三がっ」

「まだです。我らは動いてはなりません。火の手が上がるまで」


凪は今にも飛び込みそうな新蔵を押さえて言った。だが、その顔はいつもの冷静さを失っている。


「凪先生。いったい何が起こっているのです!」

「『鬼』です。正三は背負った『二の剣』の声を聞き、対となる『一の剣』の元に走ったのでしょう」


凪の言葉に、長瀬と新蔵の顔色が変わった。

火の手は上がるだろうか?

弓月らは渦中にいる。神剣を持った正三をこのままにはできないが……彼らも宗主の最期を聞いている。

万にひとつも、正三が同じ道を選んだ時は――。

知らず知らず、刀を握る手に力が籠もる三人だった。