「…あ、」


少し前を歩いていた蓮が立ち止まる。


「どうしたの?」


蓮は昇降口の方を見てから
「俺、忘れ物したから来い。」って言って
来た道を戻っていく。


「え?待ってよっ『祐人、私ケーキ作ったから家来ない?』


あたしの声は誰かの声にかき消された。


…誰?


昇降口かな…



『ん、行く。』


『やったぁ、早く行こっ?』



―祐人くんと…辻野詩織だ。