香苗先輩と昴先輩があたしにイジワル言って、あたしが反論する。
簡単にいなされたりなんかして。
これは、香苗先輩が卒業するまで部活中でよくあったやり取りだった。
香苗先輩が卒業した今、そんなやり取りはもうなくてすごく寂しかった。
もう出来ないと思ってたやり取り。また、出来た。
そう思って薄く笑えば昴先輩も笑った。
「先輩?」
「三浦さん、楽しそうだね」
見透かされたことに頬を染めれば昴先輩はまた笑った。
「僕もだよ」
「え?」
「楽しいね」
――――――――。
「昴くん!奈々ちゃん!」
「あ、はい!?」
聞こえた声に慌てて返事をして見ると、車の助手席の窓から手を降る香苗先輩を見つける。
急いで荷物を持って香苗先輩のもとへ向かった。
……………吃驚した。
さっきの出来事を思い出して、火照る頬を抑える。
不意打ちであの笑顔はズルいって…。
