星々は輝いて、彼女は泣いた。

 


「あ…、あの……」


静かに、どんどん近づいてくる島や海を見ていると後ろから綺麗なソプラノ声が聞こえた。


昴先輩と一緒に振り向けば、綺麗に髪を巻いた女の人が立っていた。思わず自分の黒いショートカットの髪を見る。


「どうしました?」


微笑みながら先輩が問う。


その微笑みに相手の女性は頬を赤く染めた。


「あ、あのっ……!良かったらアドレス交換しませんか!?」


逆ナン………?

ぽつりと心で呟く。


「すみません。今、携帯の充電が切れてて…。僕、自分のアドレスも覚えてないんで…」


「あ………。い、いや!もう、全然気にしないで下さい!」


やんわり、断られたと察した彼女は明らかに落胆の表情を見せた。


「本当にすみません」


「い、いや…。あの……失礼ですけど、そちらの方は彼女さんですか……?」


チラッとあたしを見ながら言う彼女に、あたしはグッと手を握りしめた。先輩は困ったように笑っている。


「いや、彼女は僕の後輩です。今回の旅行は部活の活動で来たんですよね」


―――先輩は残酷だ。



「あ、そうなんですか!?いや、彼女さんだったら失礼なことしたなって思って…」


先輩の行動に


「いや、僕に彼女なんていませんよ。携帯は本当に充電切れなんです。ほら」


色々な人が


「あ、本当だ…。じゃ、じゃあ、えっと……これ、あたしのアドレスなんですけど!受け取って下さい!」


一喜一憂して、


「あ、ありがとうございます。連絡しますね」


振り回される。


「いえ……!えと、それじゃ…!」



笑顔で去っていった彼女に、笑顔で見送る先輩を思わず見つめる。

そんなあたしに先輩は「ん?」と微笑んだ。


「…………本当にメール送るんですか?」


少しむくれながら言えば、先輩は優しく笑いながらあたしの頭を撫でる。


「―――しないよ」


「え……っ!」


その言葉に、バッと先輩を見上げれば先輩は、紙を握っている左手を海の上で開いた。



ヒラヒラと紙は宙を舞って、海に落ちる。


「――しまった。落としちゃったから連絡出来ないや」


ワザとらしく笑う先輩に、思わずあたしも頬を緩めた。