紙のない手紙

「そろそろね…」




笹川の背後にある物陰で様子を伺っていたリンが、そう呟き忠時に目配せをする。








忠時は無言で頷くと、鎌を空中から取り出し、笹川に向かって一直線に走っていった。









「た、忠時!?」








俺は身を乗り出して、観察した。









笹川は近づいてくる忠時には気付かずにまだ恐怖で顔を歪め、両手を前に伸ばしていた。







忠時は勢いそのままに、鎌を振り上げた。








「ま、マジか!」









俺は両手を穴の見えない壁に張り付け、額を壁に当てながら見ていた。











ドスッという鈍い音と共に、笹川の胸から忠時の鎌の刃が顔を覗かせた。