この人はなんか怖い。
 何か、大切なものを奪われそう。


「えーと、名前聞いてもいい?」
 ニッコリ聞いてくる実則サン。
 さっきの表情なんて欠片も感じさせない笑顔。

「榊原 楓です。」
「楓チャンね、よろしく。」
「よろしく。」
 いつみても思う。
 実則サン、可愛いなー、と。

「そうだ、アド教えて。」
 実則サンは薄ピンクの携帯を取り出す。
 あたしも携帯を取り出す。

 赤外線で交換したところで授業の開始を伝えるチャイムが鳴った。

 あたしから離れて席に座る飛鳥と実則サン。
 同じところに行くことが悔しくて、羨ましい。