《加奈ちゃん！　聞いて！》

各デスクに紅茶を置いて自分の席につくと、朝子からメールが来た。

加奈と朝子は、オフィスでおしゃべりができない時は社内チャットで会話をしている。

《どうしたの？》

《さっきね、主任から仕事頼まれたの！》

《どんな？》

《主任が今度プレゼンするためのお手伝い！　資料集めとか企画書作ったりとか》

《すごいじゃん！》

《うん！　大野さんはやる気があるから責任ある仕事をどんどんまかせたいって！》

《よかったね！》

加奈は少し笑いたくなったが、我慢した。また心臓がむず痒くなった。

《今日はいいことばっかりだよ！　金曜日も楽しみ》

《楽しみだね！》


「大野さん！　早速だけどちょっといい？」

「はい！」


《仕事だ！　行くね！》

《頑張って！》


いそいそと主任のデスクに向かう朝子の背中を、加奈は、むず痒い胸を抑えながら見つめた。