「じゃあまた明日ね」


優しく笑った永瀬くんは、そう言いながら、そのまま傘を押しつけるようにして、雨の中を走って行って帰ってしまった――。


雨で視界の悪い世界へどんどん見えなくなる背中に、少しだけ寂しさを感じた気がした…。



さっきまでの夢のような現実を思い返す。


交わされた会話を頭の中でリピートすると、あたしの胸は激しい音をたてる。


「…ありがとう…」


そんな胸に傘を抱いて、あたしはまた小さくつぶやいた。


そして、永瀬くんの温かさがまだ残る傘の柄を持ち、広げて、雨の世界に飛び込む。


いつもなら煩わしく思う傘に当たる雨粒の音も、今日はなぜかあたしの中に染みわたるように響いて聞こえた…。


“また明日ね”
永瀬くんの言葉と一緒に…。