だからきっと、ドキドキしてるんだ…。

初めてだから、ドキドキしてるんだ…。


心臓がいつもより過剰に動いているせいで、ほっぺたが熱いあたしに、永瀬くんはまた傘をつき出す。



「俺ね、家すぐそこなんだよ。だから遠慮しないで、更科さんが使ってね?」

「えっ?でも…っ、」

「俺のじゃ、イヤ?」


少し悲しそうな上目遣いに、拒否してることに胸が痛む…。


「別に…いやとかじゃ、ないんだけどね…」


ただ、やっぱり恥ずかしいし、永瀬くんをずぶ濡れにしちゃうのは本当に悪いと思う……。


「じゃあ、いいじゃん」


さっきの表情は見る影もない、にこにこの笑顔でそう言いながら、永瀬くんはあたしに無理やり傘を持たせた。