「…笑花?」

不安を含んだような顔が
あたしの顔をのぞきこんだ。



「え…?なんで、泣い…」



あたしは天音くんの言葉の途中で走り出した。



『なんで泣いてるの?』

天音くんの聞きたいことがなんとなく分かったから。


走りながら頬を伝う温かいものを拭った。


家に帰り、何も言わずに部屋に上がり、ベッドに俯せになる。




“なんで”なんて、聞かないでよ…。


“好きだからだよ”って、言ってしまいそうになるでしょ…?


好きすぎて、苦しいんだよ…。





だからね…、あきらめよう。


天音くんのことは、あきらめよう…。


あたしが天音くんに感じるような気持ちを、天音くんは先生に感じているなら…。


今のあたしには、応援なんかできないけど、二人を見守っていこう…。


そう思えるようになった頃には外はすっかり朝だった。