少し濡れたローファーを脱ぎ、黙って家に上がる。



「あれぇ?」

そんなあたしの動きを見たお母さんが、声を出した。



「いつもみたいに『雨なんて嫌いっ』とか『もう最悪っ』とか言わないの?
…しかも…、顔赤いんじゃなぁい?」

さすがお母さん、いつも見てるだけある…。


「雨女の笑花ちゃんには、今日はどんな楽しみなことがあったのかなぁー?」

なんてニヤニヤ聞いてきたからあたしは…

「な…っ、何にもないよっ!」

と言って二階の自分の部屋に逃げ込んだ。



“好き”って言葉を発するのにまだ慣れないけど…。


天音くんを好きになってから、雨に対して、煩わしさを感じなくなった。



“恋”ってすごいね、天音くん?


あんなに嫌いだったのに。

天音くんのおかげだよ?


いつか、“天音くんを好きになって、雨も好きになった”って言える日が来るといいなぁ…。


あたしはベッドに入り、瞼を閉じた。