「だから、はい、これ」

傘立てに入れていたビニール傘を天音くんに差し出した。



「うん、ありがとう」



その時伸ばした天音くんの長い指が、少しだけあたしの指に触れた。


――時間が止まる、そんな感じがした。


天音くんの手は冷たいのに、あたしの手は触れられたところから熱を帯びてくのが分かる。


何も考えられなくなりそう…。

ドキドキし過ぎて息苦しい…。


どうしよう。


ちらっと天音くんを見ると普通だった。


あたしだけ、ドキドキしてるのかな?って悲しくなったけど、あたしも息をいっぱい吸って、

「こちらこそ、ありがと…」

と言って、触れていた手を
ゆっくり離した。