――放課後。


あたしはクラスの下駄箱のところで、天音くんが来るのを待っていた。

『放課後に返す』って言ったんだから、ちゃんと約束は守らなきゃ。


亜美に“恋だ”と言われてからあたしはずっとこの時間が待ち遠しくて仕方なかった。


だからだろうか…。

昼休みの辺りから、青かった空には雲がかかり、今ではもうグレーの空になってしまった。


少しして、後ろから聞こえた声に心臓が跳ね上がる。


「あっ、笑花?」


外はもう、ポツポツと雨が降りはじめていた…。


でもあたしは自然に笑顔になって振り返った。



「…あ、…あま…天音くん?」

やっぱり慣れない…。

また名前かんじゃった…。


たぶんあたしの顔は恥ずかしさで真っ赤だったと思う。


天音くんは、そんなあたしを見て、優しくフッて笑った。