階段をタタタタッと降りる。
降りるのはいいけど、上るのは…。
――ぱたん。
リビングの戸を開く。
「お兄ちゃん、おはよ。」
リビングに入るとお兄ちゃんは4脚のいすが並んだテーブルに座っていた。
「お、楓。おはよ。」
お兄ちゃんはいつものように、コーヒーといちごのジャムパンを食べていた。
ちゃんと自分で用意したんだ…。
いつもはしないのにさ。
何かいいことがあったんだろう…。
いいことって言ったら、葉月さんのことだろうなぁー…。
葉月さんは、お兄ちゃんの彼女。
美人で、優しくて…。
あたしの憧れの人。
「ぶっっ!!薄っ!」
あたしがパンを焼いていると、お兄ちゃんはコーヒーを吹き出した。
「あー、もぅ。何でいっつも俺が作るとうまくないんだよ…。」
ぶつぶつ言っているけど、気にしない。
お兄ちゃんがキッチンで作ってるところを想像すると、微笑ましい。
……てか、インスタントコーヒーだし、簡単なのに。
「ぷぷっ…。」
つい笑みがこぼれる。
「笑うなよ、おい。もー。フキン、フキン。」