聞き間違いかと思った。
いや、聞き間違いだと信じたかった。
でも白谷泉は、確かにそう言ったんだ。
「な、に…、言ってんの?」
私がそう呟くと。
「だって由愛ちゃん、僕の裏の顔、知っちゃったでしょ?」
「あんただって、私の本性知ってるじゃない!」
「でも僕、すっごい用心深いんだよね…。意味分かる?」
目が真実を伝えている。
白谷の目は、嘘をつけないんだ、きっと。
白谷の言いたいことが、なんとなく分かって。
私は少し震えた声で、呟く。
「私を、監視でもするの…?」
「…物分かり良いじゃん」
白谷の顔は、満面の笑みだった。
新しいおもちゃを見つけた幼い子供のようで。
それでいて、目はとても冷たかったから。
私の体には、さらに寒気が走った。
「ね?…なるでしょ?」
白谷の言葉が、資料室に響く。
「な…!ばか言わないでよ!なるわけないじゃない!」
「ふーん。結構頑固なんだね。でもさ、」
そう言って、白谷はポケットから携帯電話を取り出す。
「コレ、校内放送で流しても良いんだよ?」
白谷の携帯から流れていた音。
それは、先ほどまでの、私と白谷の会話だった。
私の本性を表す、決定的な証拠である。