「由愛ちゃん、何固まってんの?」

「へ?」


白谷の言葉で、我に返った。




わたし今、何考えてた…?

こいつのこと、かっこいいって、…思った?




「ねぇ、由愛ちゃんのその本性は、秘密なんだよね?」

「は…?」

「知られたくないでしょ?…誰にも」

「…うん」


私は深く頷いた。




優等生は嫌だけど。とても不本意なんだけど。
私は今のままじゃなきゃ。

今のまま、平穏に学校生活を送るしか、私には考えられない。




不意に白谷の声が、資料室に響いた。


「僕もさ、秘密なの」

「え、」

「今の僕。〝愛想が良くて優しい白谷泉〟じゃないでしょ?」

「…何が、言いたいの?」


白谷は笑っていたけど、目には悲しみが含まれてる気がした。

私が問いかけると、白谷は笑って。









「ねぇ、由愛ちゃん。僕の、




……偽彼女にならない?」










私の体は、夕日に照らされているにもかかわらず、凍りついた。