あること、に気がついてフェンスに手をかけるようにしてグラウンドを見渡す。
――部員が減っている。
「終わったんだ」
後ろで掠れた声が聞こえた。
振りかえると俯いた草太が静かにもう一度繰り返した。
「終わったんだ」
「また来年が…」
そこまで言って言葉を呑み込んだ。
減った野球部員は……。
草太は乾いた声で、ははっと自嘲気味に笑った。
「皆そう言ってくれるよ。よくやった、また来年頑張れってな。
確かに俺には次がある。でも…」
草太の声の調子が変わった。
「先輩は最後だったんだ!!最後の夏だったんだ!!
この大会に勝つために毎日毎日マメを作って
擦り傷作って
3年間も練習してきたんだ!!
……それを、俺が終わらせた。
先輩の最後の夏を、俺が終わらせたんだ」

