「…アメリアにカイン。ここではあれだろう、わらわの部屋にくるとよい」
フィリナは優雅に踵を返す。
「カイン、立てる?」
手を差し出すと、カインはフッと笑った。
「何か可笑しい?」
ムッと睨むとカインは私の手を掴み引っ張った。
「あっ……」
―トサッ
必然的にカインの腕の中におさまる形になる。
一体何がどうなって…
私…カインに抱きしめられてる?
「…アメリア…」
耳元で名前を呟かれる。
なんか…耳がくすぐったい。
「な…何……?」
声が上擦る。
このままカインの吐息だけで溶けてしまいそう…
「声…裏返ってるぞ…」
サラッと後ろの髪を小さい束で掬われる。
「そんなっ…事……」
何だか心臓が煩い。
カインに聞こえちゃう…
「ありがとな…」
「…カイン……」
カインは私の頭を引き寄せる。だからカインの顔は見えない。
「暗闇の中、お前の声が聞こえた…」
私の声………
ちゃんとあなたに届いてたんだね…
「恐かった…あのまま消えるんじゃないかって…。でもお前が………」
私を抱きしめる腕に力が入る。
「お前が照らしてくれたから……」
「カイン…………」
私もカインの背へと腕を回す。
「あなたの強さだよ…カイン。あなたは自分の意志でその眼帯を捨てたんだから…」
カインの右目へそっと触れる。
綺麗だ…本当に……
そこへ唇を寄せる。
カインは驚いたように目をギュッとつぶった。
「汝にテルノリスの祝福があらん事を…」
―チュッ
「っ…アメリア……」
どうか彼をお救い下さい。神、テルノリスよ…


