セイントロンド



「お前はどっか儚くて、少しでも乱暴にしたら消えちまいそうで……」


カインが何を言いたいのか分からない。


でも…カインも何を言いたいのか分からないんじゃないかと思う。


だって………
いつもみたいな余裕さが全くない。



「俺が6才、使徒になったばかりん時、魔の力と神器の力が反発して暴走した時があったんだ…」


カインはポツリと過去を語り始める。


私はただカインの話に耳を傾けていた。


話によると、混血の赤子のカインを見つけて施設に連れ帰ったのは私の母さんだった。


母さんはカインや施設の子供達を自分の子のように可愛いがったという。


ある日使徒に目覚めたカインは魔の力と神器の力の反発による暴走で命を失いかけた所、母さんが眼帯に封印をかけ力を封じたという。


それがカイン・ディグラス。ディグラスは今は亡き本当の父親の苗字らしい。


「この眼帯の下には、憎い魔女と同じ紅の瞳がある。魔の象徴の…」


ギリッと奥歯を噛み締め、眼帯に触れるカインを私は見つめる。


「今回、私は眼帯に封印は施してない」


私の言葉にカインは目を見開き、フィリナは理解したように笑みを浮かべる。


「な…どういう……」

「過去と、それからその闇と向き合って、カイン」


私は真剣な瞳でカインを見据える。


そう…。
私はカインの眼帯に封印は施さなかった。


封印は…………


「私はあなたの瞳へ聖なる刻印を刻んだ」


眼帯をとっても封印が解けぬようその瞳に直接封印を施したのだ。



「俺の…瞳に………」


カインは驚いたように眼帯に触れる。


「あなたのその瞳は決して罪ではない。人の影に隠れなくたっていい、堂々とあなた自身をさらけ出していいの」


その紅い人も含めて、あなた自身なんだから…


「たとえ混血だろうと、あなたが無垢である事に変わりはないんだから…」


笑みを浮かべればカインは目を見開く。


そこから一滴の涙が零れた。



「向き合って、あなた自身がその紅を愛さなければ前に進めない。ずっと魔を恐れて生きていく事があなたの望み?」


カインはゆっくりと首を左右に振った。


「ずっと…誰にも知られたくない、知られたら居場所が無くなるって思ってた…」


流れた涙は止まらずに地面に染みを作る。


「何より…俺自身がこの瞳を許せなかったんだ…っ…」



眼帯に触れたまま涙を流すカイン。


私はカインの頬に優しく触れた。