「おはよう」
制服に着替え終わると、両親はすでに食卓で朝食に手を差し出していた。
「おはよう。明日香」
お母さんはスーツを椅子にかけコーヒーを口に含むと、もう一度席を立ち、私の朝食の準備を始めた。
「お姉ちゃんおはよ」
双子の妹の涼香。
成績優秀で美人の妹。
「おはよ・・・」
正直、私は妹が苦手だ。
「さあ、明日香、静香、早くご飯を食べなさい」
テーブルに並べられたご飯の前に座ると、テレビから流れてくる声に意識を持っていかれる。
「昨夜起きた女子高生誘拐事件についてですが・・・・」
「最近物騒ね」
涼香は言う。
「そうね。気をつけなさいね。とくに涼香。あなたはその制服だけでも目立つのですから」
母はそう言って妹に注意を促す。
「はーい」
適当に返事をする妹、涼香は私と視線が合うと言った。
「いいよね。お姉ちゃんはさ」
「何が?」
「分からない?その制服よ」
「制服?」
「はあ、これだから鈍感さんは・・・・。お姉ちゃんのその制服は、誰も手を出さないじゃない。なんせ、天下の不良高、荒高の制服だもんね」
「何それ?天下の不良高って、うちじゃなくて西高じゃない」
「そんなのはどうでもいいのよ!私が言いたいのは、お姉ちゃんは何の心配もしなくていいわよね。ってことよ」
「はあ?あまり飲み込めないわ」
「だから、バカは困るのよ、バカは!」
涼香は姉である明日香を罵りながら朝食を終わらせた。