「…宮野?」



松野空はあたしの様子がおかしいことに気づき、顔を覗き込むようにしてしゃがみ込む。



今のあたしの頭の中は真っ白だ。




……あたしが…笑わない理由…?




頭の中では、あたしの過去がフラッシュバックする。




……ヤバ…気持ち悪…。




あたしの意識はだんだん遠のいてきている。



そんなあたしの耳に入るのは、松野空が焦ったような声で『宮野! 宮野!』と叫ぶ声。



あたしの意識が完全に切れようとした時、体が浮いた。



この状況を、意識のない頭で理解しようとする。



だが、頭がついていかない。



あたしの体がリズムよく揺れる。




あ…まさか…あたし…。




そこでようやく、あたしは松野空にお姫様抱っこをされていることを理解する。



いつもなら嫌がるのだが、体に力が入らない。



少し目を開けると、焦った松野空の顔が見える。




あたしはそこで、意識を手放した。