「……私が、ですか」

九条 なぎさ以外に人はいない


それなのに
当たり前な事を聞いてくる。

それでも、心底驚いた表情の
九条 なぎさ
何がそんなに信じられないのか…


「お前以外に誰がいるんだ。
 …手伝え、なぎさ」


俺は、…なぎさの頭を
集めたプリントでポスッと叩いた。


名前を呼ばれたことに
なぎさはフッと表情を緩める

「…はい」

無表情で有名な
なぎさにしては…十分の笑顔


何故か…
“蝶”の影に霞むように
消えかけている“なぎさ”の姿が─



「先生、どうして私を“なぎさ”と
 呼んだんですか」

色々考えていた思考が
なぎさの問いによって止めた。


俺はプリントを拾う手を止めて
純粋に尋ねてくるなぎさを見つめる


なんで、
そんな…自分の存在を消すのが
当たり前みたいな…


「お前は、九条 なぎさだろ。」
「はい」

否定をしない。


「周囲は、
 私を“さなぎ”と呼びます」