【 側にいるよと笑うから 】





杉本のことは高校に入学する前から知っていた。



『また杉本君が優勝かぁ。』


『へーふーん。誰だっけ?』



中学の頃、小さい頃から一緒に剣道をしていた奈央に、好きな人ができた。隣の学校の人で、名前は


『杉本 慧!少しは覚えようとしてよ。』


『う〜ん、それは出来ない相談です。』



奈央本人がそう言った訳じゃないけど、なんとなくそうなんだろうなって思っていた。
合同練習があるときは、少し様子が違っていたし、よく男子の試合を見るようになっていた。



『あ。...杉本君がいる。』



同じ高校だと知った時の奈央は、本当に嬉しそうで、すごく可愛かった。
本人について興味はなかったし顔も分からなかった。でも奈央が幸せになってくれたらいいなって本気で思っていた。