もう少しで真実が聞けそうだったのに、誰かが間に入ってきた。

凄く間が悪かったのでそいつを横目で睨むと、予想とは違う人がいた。


「え?こわっ、俺ただいるだけなのに」

「あ、せんせー」

「兄ちゃん!?」


なんでこいつが此処に?

さっきの席を見ると、立ってから分かるが誰もいない。

つまりさっき未夢と一緒に居たのは…。


「───宮根、悠些」

「…ん?」


なんで、なんで、あたしに顔を向ける時いつもそんな優しいの。

…思わず、錯覚しそうになってしまう。


「せんせー、そうえば話の途中だったよね?」

「ああ、そうだったな」


あたしから目を離して、それを未夢に向ける。


「…なんの話だっけ」

「お前、ホント抜けてんなー」

「えへへ」

「だから──」


これはなんか聞いちゃいけないような気がする。

あたしは亜梨沙に金色のコインを渡して、あたしは店の外へと向かった。


「な、綯捺さん?」

「用事あるから」


聞いちゃいけない気がするのもあるけど、もうなんだか二人を見てられないのが一番の理由。

てか、コーヒー飲んだら眠たくなるんだな。


「綯捺ちゃん」


懐かしい呼ばれ方と一緒に今まで違う顔で彼女は口を開いた。


「離婚する前は関口(セキグチ)未夢だよ」


そう言って、昔みたいに何かを企むように笑った。

そしてこの胸の痛みの理由も分かってしまったかもしれない。