「葵ちゃん!大丈夫!?」


若菜先輩は私の両肩を掴み、乱れた息を整えながら言った。


「どうしたんですか?そんな急いで」

「今ね、葵ちゃんが女子に絡まれてるって聞いて…」


私はそれを聞いてさっきまで女の先輩達に囲まれていたことを思い出した。

フェンスに叩きつけられた時は手が震えるほど怖かったのに、数分も経たないうちにそんな気持ちも忘れてたなんて…


「…ふふ」


そんな自分の能天気さについ笑いが零れる。

先輩が助けてくれなかったらこんな風に平常心でいられてなかったかも。


「…葵ちゃん?」

「私なら大丈夫です。助けてもらったので怪我もしてないですし、こういうの慣れてますから」


中学の時は恭介のファンに何回か呼び出された。

さすがに今日みたいに殴られそうになったりはしなかったけど…