「ごっごめんなさい!」


そう言って、5人の先輩達は躓きながら走って逃げて行った。


嵐が過ぎ去ったように暫しの沈黙が流れる。

まだ動揺しているせいか、胸の鼓動がいつもの数倍速い。

私は激しく揺れ動く心臓を落ち着かせるように息を吐いた。


「あの…ありがとうございました」

「…別に。ああいうの、嫌いなだけだから」


先輩は私を見た後、決まりが悪そうに視線を逸らしてしまった。


「どうしてここに?…練習試合、見に来てくれたんですか?」

「…チビ達が試合見たいっつうから。俺はただの同伴」


そう言った先輩はフェンスに寄り掛かり、口元に微かだけど笑みを浮かべて応援席に目を向けた。

応援席では広場にいた数人の小学生が試合を嬉しそうに観戦している。

子供達を優しい眼差しで見つめる先輩の姿に、私の心は素直に跳ね上がった。