「奏人には誰にも言うなって口止めされた。バレたら大会に出れなくなるからって。だけど歩道橋から落とされた事は黙ってられないと思った。けど、それも奏人は監督に従えって…」
矢野さんは震える手で自分の顔を覆った。
「あいつは自分が辛い時も俺の心配して…監督の言うことに従わない奴は退部させられるから」
矢野さんの顔を覆った指の隙間から涙が落ちた。
丸まった背中からは矢野さんの後悔の気持ちが現れている。
先輩は自分のことよりもまず周りのことを考えてくれる、そういう人。
だからこそ先輩は皆に慕われる。
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