「ねえ、今から小林先生のとこ行かない?」
さっき那奈と合流する前に、小林先生が階段を上って行くのを見かけた。
コンビニの袋持ってたし、きっと屋上でご飯を食べてるんだと思う。
「…本当はね、少し怖いの。私の事、覚えてないんじゃないかって」
「どうしてそう思うの?」
「ほら、ぶつかった時。私は顔見てすぐ慎ちゃんだってわかったけど、慎ちゃんは多分…気付いてない。だから…」
ふと入学式の日、小林先生の後ろ姿を見ながら切なそうな表情をした那奈を思い出した。
そっか…だからあの時、あんな顔してたんだね…
その気持ち、私にもわかる。
人に忘れられるのは本当に怖い。
それが好きな人が相手なら尚更…
「…じゃあ、このままでいいの?」
「っ、それは嫌!!」
那奈は椅子から勢いよく立ち上がり、声を上げた。

