「葵はここで何してたの?」
「思い出してたんです。先輩と再会してから今日までのこと。あんなことあったなー、こんなことあったなーって…」
「ここも色々あったよな。すっかりこのベンチが“いつもの場所”になってた」
「そうですね。ホントこの一年、あっという間だったな」
私は掌に息を吹きかけて摩りながら思い出に浸った。
すると先輩は私の片手を取り、手を繋いだ状態で自分のポケットに入れた。
「あったかい?」
「…はい!とっても」
世界に二人だけしかいないかのように、暖かくて平穏な時間が流れた。
この時間が止まればいいのに…
「もう遅いし、帰るか」
先輩が立ち上がって私を見下ろしてくる。
逆光で先輩の表情が見えない。
「葵、最後にもう一度だけ抱き締めていい?」
先輩の低くて艶っぽいその声に心臓が激しく鳴り始めた。
私は立ち上がって先輩の顔を覗くと、少し頬を赤らめていてどこか寂しげだった。

