夏樹さんのスライディングが先輩の怪我をした足に当たり、先輩がその場に倒れ込んだ。
先輩は顔を歪ませ、足に手を当ててもがき苦しんでいる。
全身の血の気がスッと引いていくのを感じた。
周りの声が遠退いて、先輩の苦痛の声だけが耳に届く。
すぐに小野田先輩達が駆け寄って声を掛け、ベンチからタンカまで出てきた。
「先輩…」
先輩はタンカには乗らずに補欠選手の肩を借りて一旦ピッチの外へ出た。
白線の外側で若菜先輩が応急処置を施している。
その間、試合は再開され一人少ない不利な状況になった。
すると夏樹さんはわざと白線の外へボールを蹴り、他の夏樹さんの仲間も同じようにし始めた。
その行動に会場から一斉にどよめきが起きる。