「佳菜子さん。お父さんはまだ…?」
「ええ。お父様…やっぱり…」
「最後まで信じましょう」
私も佳菜子さんと一緒にお父さんらしき人がいないか辺りを見渡した。
だけど、会場の周りには他校の制服を着た高校生ばかりで、どんどん不安が募っていく。
「何やってんの?」
「なつ!またグラウンドの外に出て来て…早く戻らないと!」
「まじうるさい。何なんだよ、お前」
夏樹さんは鬱陶しそうに言い捨てた。
その瞬間、佳菜子さんの肩が震えたのを見逃さなかった。
「夏樹さん!その言い方はないですよ!佳菜子さんは心配して…「「…お父様!!」」
私の言葉を遮った佳菜子さんの視線の先には、駐車場の方から歩いてくる二人のスーツ姿の男性がいた。
一人は眉間に皺を寄せたまま鋭い目つきを常に崩さず、威厳を放っている。
多分、この人が夏樹さんのお父さんだ…
そしてあの事故を揉み消した人。

