さくら色 〜好きです、先輩〜


「なつはね、寂しいんだと思う。そもそも初めてサッカーを教えたのはお父様なの。お父様は国立の優勝校出身なのよ」

「じゃあどうしてサッカーするの反対なんですか?」

「お母様が亡くなられるまではお父様もいつも笑顔で、誰もが羨む程の幸せな家族だった。でもお母様が亡くなられてからはお父様も変わってしまって…」

「夏樹さんはお父さんが恋しいんだ…今ではたった一人の家族だから」


お祖母さんが亡くなった今、夏樹さんはひとりぼっちなんだ。

そんな時、部活でもレギュラーになれなくて居場所が無くなって…

挙げ句の果てには恋しい父親にクズだって罵られた。

だからお金を使って自分の居場所を無理矢理作った。


「実はね、今日お父様に決勝戦見に来てほしいってお願いしてきたの。でもまだいらしてなくて…」

「そうなんですか…お父さん来てくれるといいですね。夏樹さんをどん底から救えるのはお父さんしかいない…」


佳菜子さんは会場の入り口を見つめながら持っていた缶コーヒーを握り締めた。

残り45分。

一目でもいいから、夏樹さんにお父さんの以前の笑顔を見せてあげてほしい…