さくら色 〜好きです、先輩〜


「その日からなつのあの無邪気な笑顔はなくなったわ。お父様は今更転校するぐらいなら成績で一番を取ってサッカーでも名を上げろって仰られたの。でも成績でもサッカーでも常に上にいるのが奏人さんだった…お父様は一番を取れないなつに、お前は使えない、クズだって罵った。それからよ…なつが変わってしまったのは」

「嫌がらせですか…?」

「…知ってるのね。そう、奏人さんに嫌がらせをするようになったわ。その話を誇らしげに話されて何度もやめてってお願いしたの。だけど、なつがやめることはなかった。それどころかどんどんエスカレートして…奏人さんを突き落としてしまった」


佳菜子さんは、目を赤くして唇を噛み締めた。


夏樹さんのお父さんはすぐに動いた。

お金を使ってマスコミや学校に根回しして真実を闇に葬った。


「その後もどんどんエスカレートして、お金を使ってチームを動かし始めたの。今のなつは私の知ってるなつじゃない」


佳菜子さんの目からはとうとう大粒の涙が零れ落ちた。

透明で綺麗なその涙は、夏樹さんにまだ届いていない。

佳菜子さんはきっと夏樹さんのこと好きなんだ。

だけど変わっていく夏樹さんを見てると不安で不安で仕方がないんだね。