さくら色 〜好きです、先輩〜


「あの…あなたは?なつの知り合い?」


佳菜子さんは首を傾げながら、私を瞬きもせずに見つめて来る。


「あ、私は相手校のマネージャーの西原です。夏樹さんとは…ちょっとした知り合いで」

「そう。私はなつの幼馴染の山下佳菜子です。あの…デートって?」

「あれは違うんです…夏樹さんが勝手に…」

「なつったらまた迷惑を掛けているのね…ごめんなさい。昔はあんなんじゃなかったんだけど」


佳菜子さんは深いため息をついた。


「あの…夏樹さんに一体何があったんですか?」

「昔のなつは優しくて思いやりがあって、何処にでもいる普通の男の子だった。スポーツが大好きでね、特にサッカーは誰にも負けないぐらい上手だったわ」


佳菜子さんは自販機で買った缶コーヒーを開け、飲み口から上がる湯気をぼーっと見ながら話し始めた。


「なつのお父様は政治家なの。お母様は小さい頃に亡くなられて、なつとお父様とお祖母様の三人暮らしだった。お父様はなつがクラブチームに入ることを反対されていたの。そんな時間あるなら勉強しろってね。だけどお祖母様はなつの夢を応援していた」


夏樹さんのお父さんは凄く世間体を気にする人で勉強よりもサッカーを優先する夏樹さんが許せなかったらしい。