「俺らもあの学校を半ば強制的に追いやられて、転校したんだ」

「サッカー辞めたのか?」

「まだやってるよ。でもそんなに強くないとこだからな。だけど皆すげぇいい奴らでさ。国立でプレー出来ないのは残念だけど、前の学校にいるより全然いい」

「そうか…」


先輩は安堵の表情を浮かべた。

先輩はきっと、矢野さんから話を聞いた日からずっと他の皆の事を気にしていた。

だから今もまだサッカーを続けてるのを知って心から嬉しいんだと思う。


「奏人、すまなかった!!俺達、お前のこと助けてやれなかった。あの時皆で立ち向かってれば今頃こんな風になってなかったかもしれない」

「もういいんだ」


先輩は微笑んだ。

何処か嬉しそうな、柔らかい表情をしている。


「頑張れよ!俺達の分まで…」

「ああ」


先輩は仲間に背中を押されてピッチに入って行った。

振り返らずに拳をあげてる後ろ姿に、もうあの入学式の日のような寂しさは感じられない。