「夏樹。お前も失格になりたくないだろ?俺の事が気に食わないならそれでいい。だけど仲間にはもう何もしないでくれ。サッカーで、国立の舞台で決着を着けよう」


先輩と夏樹さんの睨み合いが数秒続に、重苦しい空気が漂っている。


「ふっ…いいだろう。俺が勝ったらわかってんだろうな?お前、俺の前から永久に消えろよ」

「…わかった」


夏樹さんは「葵ちゃん。今度デートしようね」と言って自分のチームに戻って行った。



「先輩…あの…」

「大丈夫か?巻き込んでごめんな」

「いえ。私は大丈夫です。それより…」


先輩は制服の裾を掴んでいる私の手を、周りからわからないように自分の身体で隠してギュッと握った。

一瞬で冷え切った指先が温かくなっていく。

久しぶりに感じた先輩の暖かさは、私の身体の中にさっきまであった不安や恐怖をスッと取り払ってくれた。


「俺たちは負けない。葵が優勝祈願してくれたろ?…俺を信じろよ」


そう言った先輩は自信で満ち溢れている。


大丈夫。

先輩は負けない。

絶対に…!