「どうした?こんな早くに」

「私は大会の優勝祈願をしに…先輩こそどうしたんですか?」

「俺も同じ。優勝祈願」


先輩はそう言って、拳を開いて持っていた十円玉と一円玉二枚を見せてくれた。


私達は並んでお賽銭箱にお賽銭を投げ入れた。

目を閉じて手を合わせる。


選手権大会、優勝出来ますように…


どうかだれも怪我する事がありませんように…


先輩達の飛びっきりの笑顔が見れますように…


強く、強く、何度も繰り返しお祈りした。


「ははは。長いお祈りだな。何個御願いしたんだよ?」


目を開けて隣りの先輩を見ると、先輩は大きく口を開いて笑ってくれた。

久しぶりに私だけに向けられた先輩の笑顔に胸が高鳴る。

そのドキドキに気付かれないように私も口元に笑みを浮かべた。


「内緒です!言ったら叶わなくなっちゃいますから」


皆今日まで頑張ったんだもん。

大丈夫、絶対に優勝出来る。