それから月日が流れ、うちの学校は無事に選手権予選を突破した。
先輩は予選第一回戦からフル出場を果たし調子は抜群で、瞬く間に【戻ってきた天才】として時の人となった。
雑誌に先輩が取り上げられる度に夏樹さんはどんな気持ちなのか、また二年前と同じことを繰り返すのではないかと不安になる。
もうこれ以上何も起こらないでほしい、とただ願うばかりだった…
そしてクリスマスの夜。
サッカー部恒例のクリスマスパーティーがカラオケで行われた。
皆が盛り上がる中、私は一番端の席でその様子を眺めていた。
「葵?歌わねぇの?」
「私はいいや。聞いてるだけで楽しいし」
「また何か考えてたんだろ?言ってみろよ」
恭介はそう言って私の隣に腰を降ろした。

