「西原さん、ちょっといい?」


箒片手にボーッとしていると、後ろから佐々木君に声を掛けられた。

既にクラスは落ち着きを取り戻し、全員が明日の準備に励んでいる。


私は佐々木君に続いて、廊下の突き当たりまで来た。


「森本さんどこにいるかわかる?クラス覗いてもいないし携帯も通じないし」

「…里美に何か用事?」

「今日の事、ちゃんと説明したいんだ。会って謝りたい」

「何を謝るの?別に付き合ってる人がいるからごめんって言うの?それならやめてほしい…二回もごめんなんて言われたら傷付くよ。もうこれ以上里美を傷付けないで」


こんな言い方したくないけど、里美をこれ以上傷付けるのは私が許さない。

もう里美の辛そうな顔を見たくないの…


「香緒里の事は違うんだ。夏休みに板橋のこと相談されて一緒に警察に行ったけどただの痴話喧嘩だって、事件性がないから動けないって言われた。最悪なことに教育実習で来るし、俺が彼氏の振りをして近くにいれば板橋も現実を見てやめると思って…」


いつものしっかりした彼とは違って、今の佐々木君は弱々しい。