さくら色 〜好きです、先輩〜


「……ちょっと待って。ねえ、向こうから声しない?」


階段を降りようとした時、微かだけど男の人の声が聞こえた気がした。

ゆっくりと足音をなるべくたてないように廊下を歩く。

すると視聴覚室のドアが5センチ程開いていて、そっと中を覗いた。


「あれって…板橋先生と佐々木君?香緒里ちゃんもいるよ。声掛けようか」


那奈は私にしか聞こえないぐらいの小さな声で言った後、ドアを開けようと手を掛けた。

私はすかさずその手を掴んで止める。


「待って!」

「どうしたの?」


なんか嫌な予感がした…

佐々木君が怒ってるように見える。


それに…


「香緒里ちゃん泣いてない?」


私がそう言うと、那奈も三人の異変に気付いたようだった。