「えっと…佐々木君はどの芸人が好きなの?」

「俺は最初に出てきた二人かな。でも実はあんまお笑い芸人ってわからなくて」

「そうなの?じゃあなんでライブなんて…」


佐々木君が一瞬、眉を顰めたのを私は見逃さなかった。


「うち、父親が総合病院の医院長やってるんだ。知ってる?佐々木総合病院」


え?佐々木総合病院ってこの辺じゃ一番大きい病院だよね?

私も何度か行ったことあるけど…


「うち厳しいんだ。テレビを見る時間があるなら勉強しろ、予備校通えって。高校も本当はもっと上に行って、大学は父親が行ってた有名な医大に行けって言われた。でも俺はバスケがしたかった。だから初めて父親に頭下げてこの高校に入れてもらったんだ。ただ、バスケは高校まで、テストは学年一番、必ず医大に合格しろっていう条件付きだけど」


私は初めて会った日の事を思い出した。

確かあの日、部活で疲れて夜勉強出来ないから今やってるだけって言ってたっけ。

それからも昼休みに図書室で一緒に勉強する事あったし。

あれはお父さんとの約束を守る為だったんだ。