さくら色 〜好きです、先輩〜


誰も来ない時間は夜空を見上げた。

山なだけあって無数の星が空一面に散らばって金色に輝いている。

都会では見られない目の前に広がる光景は息を呑むほど綺麗で、俺の中に生まれた醜い感情が洗われていく気がした。

一週間もここにいたのにこの星空に全く気付かなかった。


葵と一緒に見たかったな…

葵の事だからきっと感動して泣くんだろうな。


「ハハ…」


そんな葵を想像したら自然と笑みが零れて、幸せな気持ちになった。



ーーーーーガサガサガサ!!


「桜井君!!」

「うわ!!何だ、萩原か…どうした?」


白い布を被ってお化けに変装しているせいで、生い茂る草の中から突如現れたその姿に思わずぞっとした。


「ハァハァ…あ、葵ちゃんが…」

「葵がどうした!?」


顔を蒼くした萩原の口から思い掛けず葵の名前が出て来て、胸がざわつき始める。