さくら色 〜好きです、先輩〜


強化合宿初日の朝、葵は俺に無理矢理笑顔を作って見せた。

そんな葵を見た瞬間、心臓に矢を射抜かれたような痛みが走った。

俺が選んだ道なんだ…

俺よりも葵の方が数倍辛いんだから、俺がこんなんじゃいけない。

だけど、合宿中は葵の様子が気になって仕方がなかった。


そして二日目の午後。

休憩中に小野田は俺をグラウンドの端に呼び出した。

真剣な面持ちで俺を見据えてくる小野田に、俺は居た堪れない気持ちになって思わず身体を背けた。


「お前、何かあったのか?」

「いや、別に…」

「ふーん…俺にはそうは見えないけど。ずっと西原さんの事気にしてる」


小野田はベンチで休憩中の部員に冷えタオルを配る葵に視線を送りながら言った。


「そんなことねぇって…」


図星だった。

俺は大事な時期なのに、葵のことばっか気にして練習に身が入ってない。