さくら色 〜好きです、先輩〜


次の日から葵は元気がなかった。

作り笑いをして無理に明るく振舞ってるように見えた。

ぼーっとする時間も増えた気がする。

きっと葵はあの日のことをまだ気にしてるんだと思う。


「桜井君、昨日のことだけど…」


萩原はおずおずと俺に話し掛けた。


「ああ。萩原はもう大丈夫か?」

「私は平気。何もされてないから。けど葵ちゃんは簡単に忘れられないと思う」

「…何があった?」


萩原は昨日の事を詳細に教えてくれた。


「あれは抱き締められてたわけじゃないのよ?あいつに腕引っ張られてよろめいた所に桜井君がタイミング悪く来ただけで…」

「けど葵からしたらそんなの関係ない。知らない男に触られてあんな不気味に微笑まれて…怖かったはずだ」


俺は一番大切な人を守れなかった。

俺といると夏樹はまた葵に何かしてくる。


俺が近くにいたら…

葵をまた傷付けてしまう。


俺は悩んだ末に葵を広場に誘った。

「距離をおこう」って伝える為に…