さくら色 〜好きです、先輩〜


その光景を目の当たりにした俺は、頭に血が登って夏樹に掴みかかりそうになった。

だけどそんなことしたら夏樹のやり方となんら変わらない。

俺は自分を必死で抑え、葵の腕を引っ張って自分の後ろに隠した。


夏樹は俺を歩道橋から突き落とした時と同じ不気味な笑みを浮かべて帰っていった。


「先輩…怖かった…怖かったよぉ…」


俺は葵が折れてしまいそうになるぐらい強く抱き締めた。

葵の存在を確かめるように…

葵からは微かに夏樹のきつい香水の匂いがする。

それだけで俺の心は嫉妬でかき乱された。

あいつ、葵が俺の彼女だって知ってから急に目が変わった…

もしかしてまだ何かやる気なのか…?

不安は解消されることのないまま、どんどん募っていく。