暗い夜の公園に灯る色とりどりの花火。

火薬の匂いが鼻を掠める度に不思議と寂しい気持ちになる。


この夏は色んなことがあった。

辛いことも、幸せなことも。

私はきっとこの夏を忘れないだろう。


私は恭介に頼んで先輩を公園の外れに呼び出した。

ここからだと遊具が死角になって他の皆の姿は見えない。

秘密の関係の私達にも、私の想いを先輩に告げる場としても最適な場所。


「もう落ち着いた?」


先輩はそう言いながら私の方へゆっくりと歩いてくる。


「はい。探してくれて、助けてくれてありがとうございました」


若菜先輩が教えてくれた。

先輩に私がいなくなったって言ったら血相を変えて森の中に走っていったって。

それを聞いて胸がギュッとしたんだ。


私を必死で探してくれた先輩…

その想いだけで十分だった。


この一週間ずっと考えていたことがやっと決心出来た。

目を閉じて、先輩との思い出を走馬灯のように思い返す。

それからゆっくり息を吐いて瞼を上げた。



「先輩、私と別れて下さい」



心地よい夜風が頬を摩る度に、すぐ側まで来てる秋の気配を感じさせた。