「先輩、約束覚えてますか?」


約束…?


それが何なのか気になったけど、私はこの異様な雰囲気に圧倒されて開き掛けた口を閉じた。


「覚えてるよ」

「俺、先輩を信じてますから」

「ああ」


先輩が頷くと、二人は緊張の糸が切れたかのように柔らかい表情になった。


「それじゃ、俺は戻ります」


恭介は先輩に一礼して私を見た。


「葵!」

「…ん?」


私は恭介の瞳が揺れているのを見逃さなかった。

震える唇も、

握り締めた手も、

恭介は必死で抑え込んでいる。


「幸せになれよ!!」


そう言って、拳を空に向けて高く掲げ、白い歯を見せて笑った。


ありがとう、恭介。


大好きだよ…


恭介の優しさが私の心にいつまでも響いた。